五十肩とは

定義

五十肩とは40−50歳代に多く発症し、関節の動く範囲が徐々に悪くなり、同時に痛みが出てくる病気です。英語ではfrozen shoulder, adhessive capsulitis等の呼び名があります。 それぞれ日本語にすると癒着性肩関節包炎、凍結肩となりますが、日本では歴史的、慣例的に肩関節周囲炎、凍結肩等の呼び名を使うことが多いです。

症状

肩関節可動域(動く範囲)が痛みとともに徐々に悪くなっていきます。ピークになると、じっとしていても強い痛み、疼痛が出現し睡眠不足を引き起こします。

原因

軽微な外傷がきっかけになっていることもありますが、多くの場合はほとんど原因がありません。通常肩の腱などに大きな損傷は伴いません。関節可動域悪くなる直接の原因は関節包と呼ばれる、関節の周りにある組織が弾力性を失い動きを制限します。関節包が硬くなる原因は特定される原因はまだ未知の部分が多いですが、何らかの微細な血管の障害の関与なども考えられています。

自然経過

肩関節可動域低下が出現してから多くの場合は1年〜1年半程度で改善します。その後はほとんどの場合は日常生活等で支障を残すほどの可動域制限は残りません。

治療

基本的にはほとんどの場合保存治療で長期間かかって治癒します。 痛みを取るための方法は、消炎鎮痛剤内服、湿布、ステロイドやヒアルロン酸の関節内注射等あります。 可動域獲得のためには運動療法、リハビリ等ありますが、麻酔下徒手的授動術、観血的授動術等のより積極的な治療もあります。 麻酔下授動術は、神経ブロック麻酔(エコーガイドした含む)によるものや、全身麻酔によるものがありますが、これらは新しい技術では全く無く、何十年も前から行われてきました。骨折、神経損傷等の合併症が無視できない程度の確率であります。 関節鏡視下授動術は狙った場所の関節包を切離できるために骨折や神経損傷の合併症はほぼ回避できますが欠点は入院、麻酔等必要とすることです。

五十肩

右肩関節を前方から見たところです。青色で示してあるのは正常な関節包です。十分に余裕、弾力性があります。一方、オレンジで示してあるのは五十肩をわずらった状態の関節包(正確には関節包靭帯複合体)ですが、弾力性を失い、短縮しています。その結果肩の動きが悪くなります。また、五十肩になると関節の中に強い炎症が起こるため疼痛、夜間痛、運動時痛を伴います。

正常な肩関節の動き

肩関節の動き

正常な状態では関節包は十分な弾力性があり、動きを妨げません。

五十肩

五十肩の状態(挙上時)

五十肩になると関節包がかたくなり動きを妨げます。上腕骨と肩甲骨臼蓋の間の動きが低下し同時に運動時痛、夜間痛が生じ、睡眠不足などで精神的にも大変を苦痛をともないます。

五十肩 肩関節鏡 鏡視下授動術

五十肩の肩関節鏡所見

関節の中は赤くはれ上がっている状態です。赤いひだのようなものが炎症を起こした滑膜です。右肩を後方から見たところです。 右上が上腕骨頭で下が肩甲骨臼蓋

五十肩 肩関節鏡 鏡視下授動術

肩関節鏡視下授動術

関節の袋(関節包)を切離しているところです。

<五十肩 肩関節鏡 鏡視下授動術

関節包切離が終了

関節の一番下の部分の関節包が完全に切離されています。これは全周性肩関節包切離術であり、 通常この部分は残して関節包切離する方法が一般的でありましたが、武田らは早くからこの部分の関節包を切離することが効果的 であることを報告しました。ただしこの部分を安全に切離するのは神経が近いので技術的な難しさが伴い、経験と解剖の熟知が必要です。 詳しく整形外科月刊誌「Monthly Book Orthopaedics. Vol.19 No.2 上肢の関節鏡手術のコツとpitfall」をご参照ください。鏡視下授動術の詳細が説明してあります。