反復性肩関節脱臼

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武田整形外科 武田 浩志

正常の肩関節

正常の肩関節 左図は正常の肩関節の模式図です。肩関節はたとえるならティーの上にゴルフボールが置かれたような構造になっています。 したがって動く範囲は大きいのですが、他の関節に比べ非常に不安定であり、最も脱臼を起こしやすい関節となっています。 靭帯(じんたい)は上腕骨頭(じょうわんこっとう)と臼蓋(きゅうがい)をつないでおり、関節が外れないようにする役割があります。 図の黒い部分は関節唇(かんせつしん)と呼ばれ、受け皿(臼蓋)の縁取りのようなもので、 受け皿を深くし関節の安定性に大きく寄与しています。

脱臼している時の状態

肩関節脱臼

脱臼すると多くの場合、臼蓋から靭帯と関節唇がはがれます(Bankart Lesion)。 場合によっては臼蓋の縁が骨折することもあります。 また、骨頭の後方の軟骨も多くの場合損傷されます(Hill Sachs Lesion)。
* これは外傷性に脱臼する場合についてであり、非外傷性の場合は若干話が異なります。


反復性脱臼となった状態

反復性肩関節脱臼

靭帯と関節唇が正常な位置につかない場合は反復性脱臼(いわゆる癖になる状態)になることが多くなります。 反復性脱臼となる確率は初めての脱臼が起こった年齢に大きく影響され、若いほどその確率は高くなります。例えば10代で初めて 脱臼した場合、反復性となる確率は80~90%にもなります。 その中でスポーツや日常生活に支障が出る場合は手術が必要となることがあります。


反復性脱臼の病態

肩関節鏡 反復性肩関節脱臼 肩関節鏡 反復性肩関節脱臼 肩関節鏡 反復性肩関節脱臼

2枚の写真は関節鏡により肩の後方から見ています。前方の関節唇② が臼蓋③からはがれている状態が関節鏡で認められます。上腕骨頭①はこの状態では肩を外転、 外旋をしていくと限界を超えたときに脱臼してしまいます。 いくら肩の筋力が強い人でもある限界点を超えてしまうと脱臼してしまいます。


関節鏡で靭帯を修復した状態(関節鏡視下バンカート法)

関節鏡視下バンカート法 肩関節鏡 関節鏡視下バンカート法 肩関節鏡 関節鏡視下バンカート法

関節鏡で靭帯を臼蓋へ逢着します。 関節鏡を入れるための1cm程度の創が皮膚に3箇所入ります。はがれた関節唇②を臼蓋③に逢着しています。 なお逢着する際、バンパーのような効果(土手を盛り上げるといったらわかりやすいでしょうか。) を出すために意図的に関節唇を盛り上げています。 そうすることによって動画で示すように上腕骨頭①が脱臼しなくなります。